私立探偵マーロウは酔っ払った金持ちの亭主を拾い、その男、テリーと不思議な親交を暖める。やがてテリーはのっぴきならない面倒ごとに巻き込まれ、マーロウはその逃亡を助ける。そしてその評判を聞きつけた美貌の夫人から依頼を受ける。
もう、ミステリの世界ではほぼ古典ですね。アメリカもので古いのはクイーンくらいしか読んだことがなかったんですが、あっちのスカした感じとは違って、こっちはすごく南部の香りがしますね。舞台は西海岸ですが。テレビドラマになっちゃいますが、古くはコロンボとか比較的新しいのだとナッシュ・ブリッジスあたりが私のイメージする西海岸的なお話ですね。
ハードボイルド、の元祖なんでしょうか。台詞回しが、描写が、スモーキーなバーボンの匂いを振りまいてます。あるいはそれは世界の村上春樹が意図的にやってるんでしょうか。いずれにせよ、日本のそれっぽい小説とは格が違う感じはします。日本人が書くとちょっと底すべりしてるような気がして仕方がないんですよね。風土の違いもあるんでしょうけれども。サムライはハードボイルドとはちょっと違うんだよなぁ。サムライはもっと寡黙で馬鹿正直なイメージです。
村上自身のあとがきに、ヘミングウェイとチャンドラーの関係について解説があります。ここで2つははぁと思いました。ひとつは、ハードボイルドの系譜の根っこにはヘミングウェイ爺さんがいるんだ、ということ。もうひとつはこの南部の香りはそこから来ているのであろうこと。そんなことも知らなかったのか、と言われるとそれまでですが。
ツンデレ姉さんとの別れの後の描写、「さよならを言うのは、少しだけ死ぬことだ。(To say goodbye is to die a little.)」 なるほど。だから私はさよならを言うのが嫌なのかも知れない。「じゃ、また。」みたいに逃げちゃってますね。普段から。タフさが足りないなぁ。
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